「株式会社 TENGA」の社内ベンチャーとして、2016年秋に立ち上げられた「株式会社 TENGAヘルスケア」。設立されてまだ間もない「TENGAヘルスケア」のコミュニケーションマネージャーの中野有沙さんに、設立の経緯やこれからのビジョンなどをうかがった。
株式会社 TENGAヘルスケア コミュニケーションマネージャー 臨床心理カウンセラー 中野 有沙
ーー社内ベンチャーとして、「株式会社TENGAヘルスケア」が立ち上げられた経緯を教えてください。
TENGA創業以来のコンセプト「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」ということに対して、TENGAヘルスケアは、「性の悩みを表通りに、誰もが向き合えるものに変えていく」ということをコンセプトにしています。
従来のアダルトグッズは、男性器や女性器を模したものが多く、異性愛者前提に作られた商品がほとんどでした。しかし、TENGAはそれを無機質で手に取りやすいデザインにしたことで、ゲイの方からご好評を多くいただいております。
こういったことも、コンセプトの「誰もが楽しめる」を表現している一つであり、どこかで引っ掛かっていたかもしれない世間の性に対する違和感を解消したのではないのかなと思います。
少しずつ、多様性についての理解は広がっていたものの、まだ健康的な性生活を送ることが困難な方もいらっしゃいます。その理由の一つとして、健康的な性生活を送るための基盤をサポートする環境が整っていないからだと考えています。
TENGAカンパニーの「すべての人が性を楽しめるものに変えていく」というビジョン実現のためには、そのような環境を「TENGAヘルスケア」が整えていくことが必要なんです。
心身の機能や性についての正しい知識を、その人が理解できるような方法で広めていくことや、その人に合わせた自助具等を開発して、身体的な機能をサポートするなどです。
そのように、社会の中で今まで足りなかったものを補い、発展させていこうとして立ち上げられたのが「株式会社TENGAヘルスケア」です。
ーー会社がスタートして約半年が経ちました。この間は、いかがでしたか?
もともとTENGAでも医療・福祉・教育領域のことに関して、活動を行っていましたが、TENGAヘルスケアが発足したことで、さらに専門家との繋がりが広がり、より専門的なサポートや研究開発を進めていくことができるようになりました。また、医療機関でのお取り扱いも、大変ありがたいことに少しずつ増えてきています。
例えば福祉関連では、これまでは身体障がい者の方へのサポートがメインだったのですが、知的障がい者の方も視野に入れたサポートを進めています。2月には愛媛県松山市で、当事者の親御さんや性教育の専門家らと「障がい者・児の性と生を考える会」というNPO市民団体を共同設立しました。この会を通して、当事者の声を集め、何が必要か、自分たちには何ができるのかといったことを専門家の方々と一緒に取り組んでいこうと思っています。
「自立支援センターむく」という障がい者の支援活動をしているNPO法人と共同で、障がい者向けの製品や、既存の製品を使用するための自助具の開発にも取り組んでいます。これまでにも、握力がない方が男性用のTENGAを使用する場合、手に装着したバンドでTENGAを固定して使用する自助具(カフ)を提供させていただいていました。身体障がいといっても、それぞれ状況が違うので、様々な方が使用できる製品を当事者の声を聞きながら作っていければと思っています。
ーー身体障がい者の方、知的障がい者の方への支援を主にされているんですね。
ほかにも、3月には、札幌で行われた「GID(性同一性障害)学会」にて企業展示を行い、たくさんの方が足を止めてくださいました。
そして、もうすぐ『東京レインボープライド2017』へのブース出展が待っています。またFtMトランスジェンダー(Female To Male[女性から男性へ])の方に向けた製品の開発も進めています。現状、他社製品も含め適したものがないため、ニーズなどをリサーチして、体にもフィットし、パッケージなどもFtMの方に受け入れやすいものを考案していけたらと思っています。
ーーこれからの展開や今後のビジョンなどについて、聞かせてください。
性がタブー視されている環境の中では、解決の糸口が見つけづらいのか、長年ずっと抱え続けられている問題がいくつもあります。例えば、障がいのあるお子さんをお持ちの家族が、お子さんの性の問題に直面しても、誰にも相談できずに思い悩んでいるなどです。学校や病院、個々の団体や組織の中だけでは、答えが見つけられなかったり、表面化しづらかったりすると思うんですよね。
そういうもどかしいところに、TENGAヘルスケアが入っていき、一緒に解決していきたいと考えています。専門家と悩んでいる方の間に入って繋がりを作り、それぞれが持っている専門知識や生の声を拾い上げて、共有し、連携していくことで、解決の糸口が見つかっていくものがきっとあります。性の悩みを開拓し、表通りに出して、一つ一つ向き合いながら解決していきたいです。
ーー最後に、「TENGAヘルスケア」の事業を担っていくにあたって、中野さんの思いや目標などを聞かせてください。
LGBTから始まり、LGBTIQとか、いろんな用語が使われ始めていますが、あまりこう、カテゴリー化されないような世の中になったらいいなと思います。みんなそれぞれだし、自分が正確にどこに位置しているかなんてハッキリと誰も言えないと思うんです。多様性を学ぼうとか、最近よく聞くけれど、多様性って学校教育などで学ばなくても、世の中にいくらでも溢れているからこそ、身近なところから学べるんじゃないかと。髪や目、肌の色もそれぞれ違うし、障がいのある方も、セクシュアル・マイノリティもいる。向き合おうとすれば、本当に様々な人が身近にいるんです。
自分も他人もそれぞれ違っていて、自分を認めてもらうためには自分のことを話すし、相手を受け容れるためには相手の話も聞く。一方通行ではない、そういうコミュニケーションがあって、お互いのありのままを認め合えるような、そんな世の中になれば良いなと思っています。
■TENGA RAINBOW PRIDE CUP[テンガ レインボープライド カップ]
参考価格:750円(税別)
いつもの赤いボディをレインボーに変え、またTENGAの象徴ともいえるボーダーラインを、あえてハッキリと区別しないデザインにして、「私たちにボーダー(境界線)はない」というメッセージを発信する数量限定の特別なCUP。
●株式会社 TENGA
https://www.tenga.co.jp
●株式会社 TENGAヘルスケア
https://tengahealthcare.co.jp